杏 オケ老人! ヴァイオリン 指揮者
初めて購入したのは、発売日と同じ、2010(平成22)年12月7日火曜日。
あの2010(平成22)年に錦戸亮主演で公開された映画化作品『ちょんまげぷりん』や、前年2015(平成27)年10月16日日曜日より公開の映画化作品『探検隊の栄光』と相次ぐ、荒木源執筆の『オケ老人!』(小学館文庫)が...。
折しも、仕事の合い間の癒し欲しさの強かった時期とあって、題名の面白さから、つい衝動買いして...。
一気に読み切れる心地良さはもちろん、物語そのものが本当に面白かったとあって、就寝前にしばしば読むことも...。
物語のあらましは、学生時代から趣味が高じてのオーケストラでのバイオリン弾きを経て、30代半ばの高校の男性数学教師・中島が、梅が岡高校に赴任。 着任早々より地元の文化会館でのアマチュアのオーケストラの演奏を聴き、入団を決意。
ところが、向かった「梅が岡交響楽団」は、老人ばかりのオーケストラ。
先日鑑賞したコンサートは、エリート集団の「梅が岡フィルハーモニー」という全く別のオーケストラ。 すなわち、小さな町にはアマチュアのオーケストラが二つ存在していたことを知らないまま...。
それでも、若者の入団を大喜びする老人たちに自分の勘違いを言い出せないまま、「梅が岡交響楽団」に参加することになった中島は、彼らの予想以上のダメダメ振りに、抜け出そうと奔走するも、なんだかんだと辞められず、ついには指揮棒を振る破目に…。
そんな時、フランスから世界最高と言われる指揮者ロンバールが来日、「梅フィル」を指揮することになるものの....。
やがて、さまざまな困難を経て、感動的な音楽を演奏するオケに成長していくパワフルな老人たちと並行して、老人集団「梅響」と音楽エリート集団「梅フィル」という二つのアマチュア・オーケストラの対立、そのまま彼らの背景にある商店街と大型電器店との確執、ライバル同士の男女の間に芽生えるウィリアム・シェイクスピアの代表作『ロミオとジュリエット』張りの恋物語も絡むこととなり、大騒動へ...。
ごく普通の日本人たちとロシア人指揮者や背後に暗躍する諜報機関(?)まで絡んで繰り広げられる奇想天外な面白おかしさは、何度読んでも忘れられないものの...。
「参加することに意義あり」のオリンピック精神と、「アマチュアであっても技術向上のための競争原理も必要」といった、スポーツや吹奏楽の世界での相反する(?)かのような古くから伝えられる永遠のテーマには、考えさせられてしまうものが...。
作者はおそらくオケ経験者(バイオリン?)と断言できるくらいに、場面描写におけるリアリティには、つい心惹かれてしまって...。
いずれにせよ、一気に読み切れる心地良さかつ爽やかな物語だったものの、投げかけているテーマは案外大きかった。
やがて、2016(平成28)年秋頃、かの原作を前提に映画化作品として、公開が決定へ...。
原作における主人公の30代半ばの高校の男性数学教師・中島と違って、杏案じるは学生時代からオーケストラでバイオリンを弾いてきた数学教師・小山千鶴。
意外にも、映画初主演だったことには、驚き...。
公開となってからは、胎教または子育てにふさわしいBGMになるのかもしれない???
監督・脚本は、2012(平成24)年公開の映画『ぱいかじ南海作戦』を手掛けた、劇団大人計画所属の細川徹。
ほかの出演者に関しては...。
千鶴が密かに恋心を寄せる同僚・坂下に、坂口健太郎。
千鶴が数学を教える生徒・和音、黒島結菜。
ライバルオーケストラ「梅が岡フィルハーモニー」のコンサートマスターに、光石研。
「梅が岡交響楽団」の楽団員には、笹野高史、小松政夫、左とん平、石倉三郎、藤田弓子らベテランキャスト陣。
この映画にあたっての杏は、楽器演奏に指揮にと初挑戦の多い作品とともに、愛すべきキャラクターが沢山いる原作ゆえ、本読みをしただけで笑いと涙が出てきたとのこと。
加えて、原作同様に、キャストにせよスタッフにせよ、大先輩方のあまりの多さゆえ、相当飛ばしていく勢いがいつ途切れてしまうのか、少々不安だったという。
それでも、気負いなくのびのびと乗り切ることができたと感謝の気持ちいっぱいに。
そして、人と人との絆が着々と根を張って、ひとつの花を咲かせることができたという実感も...。
それらが込められた作品の仕上がりと公開、待ちきれなくなってきた。
通常なら2,3年かかる基本的なボーイング(弓の扱い)に始まる演奏の基礎を、わずか1ヶ月で覚えてしまうほどの杏の腕前ばかりじゃない...。
杏の底抜けに明るい笑顔と伸びやかな四肢を活かしてタクトを振る姿こそが、老人たちを叱咤激励していける唯一無二の存在としても...。
2016-01-30 |
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