限界集落株式会社
初版発行は、2011(平成23)年11月25日金曜日、小学館にて。
著者は、黒野伸一。
当初より新聞やテレビニュースで何気に目にすることが時折あったものの、お恥ずかしながら、仕事の忙しさゆえ後回しになりがちで...。
そして先日、ようやく読み終えた。
率直な感想としては、相当、軽妙な語り口ゆえ読みやすくて、一気に読了してしまった、といったところかな。
主人公は、30代の青年実業家・多岐川優。
銀行員時代に企業融資を担当し、アメリカの大学院へ留学し、その後IT企業に勤務。
現在は友人と投資ファンドを立ち上げようと準備中の、若きエリート。
事のはじまりは、優がわずかながらの"人生の休息"を思い立って、父親が少年時代に、最近まで祖父がひとりで暮らしていた、田舎の実家を訪ねたことから。
祖父の死後の現在は無人、年に数回父親が訪ねて維持管理しているだけの現状。
実家のある村は、65歳以上の高齢者が大半を占める、いわゆる限界集落。
小学校も郵便局も店舗も統廃合されてなくなり、バス路線も廃止、村落自体、あと数年で消滅する運命を予感させるかのよう。
それでも、わずかながら、若者や小学生がこの村落で生活。
老人たちは、我流ながらも野菜作り、米作りに愛着をもっての日々の暮らし。
それぞれ生活する人たちの想いに触れた優は、自身の経営能力を活用して、この限界集落とみなされるこの村を蘇生させてみようと、無謀とも思える挑戦へ。
全戸の説得から始まって、集落営農組織の立ち上げに伴う特徴的な野菜のみの栽培への専念、直接販売の径路の確保、軌道に乗せての組織の会社法人化。
むろん、その間には、自家消費用の米を作りたいという村人たちからの反発、近隣の村や農協からの妨害、減農薬栽培による害虫被害や獣害問題。
そして、優自身の恋愛や人生計画にまつわる揺れる心もあって。
11月26日水曜日発売となる続編の『脱・限界集落株式会社』も、奥の深い物語になりそう。
この2冊の面白小説だけで、日本の農業問題を解決できると断言できないまでも、進行中のさまざまなこの国の課題に思いを馳せて、少しずつ行動を積み重ねる第一歩を促すための、貴重な一冊となるはず。
何よりも読みやすい文章だから、あとは気分転換に目を通すことの繰り返しで、柔軟な発想と実践の原動力へとつなげるのが適切。
「できない言い訳より、できる理由」
いわゆる加点主義的な発想と見方と実行力が、より多くの人たちへ浸透することを祈って。l
2014-02-05 |
nice!(0) |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
編集
コメント 0