wood job! DVD Blu-ray
映画監督で脚本家の矢口史靖の作品か...。
人間を描くのがうまいなあと、ついつい感心させられてしまう。
その理由は、東京造形大学に入学して、1年先輩の鈴木卓爾に影響を受けて、8ミリによる自主映画を撮り始めた蓄積あってのこととして、言うまでもないことだろうけど...。
それ以上に、リアリティの追及が映像として反映されていることによる魅力によるものかもしれない。
だからこそのこれまでの作品、忘れられない。
学生時代の人間模様ならば、2001(平成13)年公開の『ウォーターボーイズ』、2004(平成16)年公開の『スウィングガールズ』が...。
社会人同士ならば、2008(平成20)年公開の『ハッピーフライト』、2012(平成24)年公開の『ロボジー』が....。
そして、この年2014(平成26)年5月10日土曜日公開の『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』もその一つ...。
原作は、2009(平成21)年5月に徳間書店より刊行され本屋大賞第4位となった三浦しをん執筆の『神去なあなあ日常』と、2012(平成24)年11月の続編『神去なあなあ夜話』から。
同時に、矢口監督にとって初となる原作付きの作品。
監督としては、原作を読み終えた上で、さらに9ヶ月の取材を重ねることで完成させたという。
もちろんCGなしのノースタントによる演技。
例えば、役者が木の上まで登ったり(カメラはもっと上)、チェーンソーで木を切るのも、それぞれ現地での訓練の積み重ねによるもので...。
それらのようなリアリティの蓄積から、役者がとても魅力的に映っているから忘れられない。
その象徴的存在が、同じ人間とは思えないほど凶暴で野生的な先輩・ヨキこと飯田与喜を演じた伊藤英明。
木に登ったり、チェンソーでの伐採も、ほかの役者に比べれば、迫力ある映像美だった。
序盤の遠くの方から走ってトラックに乗り込むシーンを運転席からずっと撮るという撮り口は、この年2014(平成26)年の日本映画で一番のシーンと評価してもいいくらい。
この時の伊藤英明の迫力、2004(平成16)年からの映画『海猿』シリーズで演じた、主人公・仙崎大輔以上だったなあ。
肝心の物語としては、右も左も解からない現代っ子の成長物語と周囲を取り巻く人たちの青春群像劇との融合は、魅せられてしまった。
毎日お気楽に過ごしていた、チャランポランな男子・平野勇気(染谷将太)は、大学受験に失敗、彼女にもフラれ、散々な状態で高校の卒業式を迎えることになって...。
そして、ふと目にしたパンフレットの表紙でほほ笑む美女・石井直紀(長澤まさみ)につられて、街から逃げ出すように1年間の林業研修プログラムに参加することに...。
ローカル線を乗り継ぎの末に降り立ったのは、ケータイの電波も届かぬ"超"が付くほどの田舎・神去(かむさり)村。
林業研修プログラムで待ち構えていたのは、早々からのヨキによるシゴキ、鹿やら蛇やら虫だらけの山、などの命がいくつあっても足りない過酷な林業の現場だった。
勇気は耐えきれず逃げ出そうとする。
しかし、例の表紙の美女・直紀が村に住んでいると知り、留まることを決意。
ところが、直紀からは無情にも突き放されるだけ。
日々は流れ、休む間もなく直面させられる体験は、まさに波瀾万丈。
しかし、精神的にどん底を実感して失うものがなくなってしまったからか、野趣あふれる田舎暮らしや、とてつもなく魅力的な村人との触れ合いから、勇気は少しずつ再生してゆくことになって...。
純粋に面白い映画だった。
矢口監督の真骨頂とするコメディー映画であるものの、粗がなく、大変品のある作品としての仕上がりで、映像、キャスト、脚本、編集、その他全てにおいて完成度が高かった。
約1ヶ月半かけて敢行した三重県山間部を中心とするオールロケから、五感を刺激する演出、雄大な自然描写、笑える小ネタ、個性豊かなキャラクターなど魅力がいっぱい。
かつ昨今の邦画TVドラマでありがちな"くどい演出"もない。
まさに現時点での矢口監督の最高傑作。
現に、9月12日金曜日から14日日曜日にかけてハリウッドで開催の映画祭『LA EigaFest 2014』での公式上映による好評を得て間もない頃のことで...。
「この監督なら安心して見られる」
そのような信頼を持たせてくれる、日本では稀な存在として、末永く心に残る映画監督になり得るのでは...。
将来が楽しみになってきた。
そして、合間を見つけては鑑賞しようかなあ。
11月19日水曜日発売のDVD/Blu-rayとして...。
映像特典や封入特典を強く求めるんだったら、Blu-rayがふさわしいかなあ。
2014-11-19 |
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