有川浩 明日の子供たち 感想
有川浩の新刊、久方ぶりという喜びあって、8月8日金曜日に発売されるなり、すぐに購入。
それは、『明日の子供たち』(幻冬舎)。
実際に読んでみたところ、相変わらず少しずつ引き込まれるかのような物語の展開だった。
もちろんそれは、有川浩のこれまでのなじみの文章構成のこともあり納得の描写で、すなわちあらゆる困難に直面しても、物語として感動的に構成する展開が...。
かの物語は、児童養護施設で働く職員と入所している子どもを主軸としており...。
主人公は、児童養護施設に転職した、やる気は人一倍の新任職員・三田村慎平。
着任初日から理想を心の片隅に秘めて仕事するものの、先輩職員からキツい指導を受けてしまう破目になってしまい...。
慎平の周囲には、愛想はないが涙もろい3年目・和泉和恵、理論派の熱血ベテラン・猪俣吉行、といった先輩職員たちが...。
そして、聞き分けのよい16歳の"問題のない子ども"・谷村奏子、大人より大人びている17歳の平田久志、といった子どもたちが...。
児童養護施設で暮らす少年少女はもちろん、彼らの世話や指導をする職員たちの想いや葛藤、現実の厳しさや強く優しく生きていこうとする姿が、ありのままに...。
実際入所児童から届いた手紙がきっかけで書かれただけに、綺麗事だけでは終わってないことに、静かに納得させられるもの。
何よりも、退所後の先を見据えた支援の方向も示してあって、「知らない」人たちには、児童養護施設の実情を理解するきっかけになるだろうと実感。
しかしながら、現実問題として、この本に反発する人や団体も存在しないとまでは断言できないもの。
知能障害ゆえに親から育児放棄されて入所している子どもが意外と多い現実ともなれば、つい目を背けてしまいたくなる気持ちも、わからないわけでもない。
それでも、2014(平成26)年1月15日水曜日より3ヶ月間放送された日本テレビ水曜ドラマ『明日、ママがいない』よりは、まだまだマシかなあ。
確実な下調べも当事者との協調もなく、書き直しにも応じないセンセーショナルな脚本のみで、押し通すよりは...。
事前に当事者からの思いを直に受け止めた上の放送ならば、多少の反発や軋轢やわだかまりがあったとしても、静かに未来を見据えてのメッセージを発しつつ、堂々といられたはずなのに...。
結局のところ、この本が世に出ても社会の偏見はなくならない、劇的に状況が変わることも難しい、といった実感は残るもののものの、あらゆる人たちがいて社会が成り立っていることを、改めて認識。
そのような理解のある人たちが少しずつ増えて、幸せを少しずつ浸透してゆく世の中になることを祈って...。
2014-08-21 |
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