松田龍平 映画 ジヌよさらば かむろば村へ
劇団「大人計画」主宰の松尾スズキによる監督・脚本・出演作品となれば、2004(平成16)年公開映画『恋の門』以来、11年ぶりとなるのか...。
作風は、ラブコメディからスラップスティック・コメディへ...。
あの2013(平成25)年4月より公開の映画『舟を編む』で第37回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞はじめ、あらゆる受賞の相次いだ松田龍平が、2015(平成27)年春公開予定の映画『ジヌよさらば~かむろば村へ~』で、主人公・高見武晴を演じるという。
またまた観応えのある作品が、一つ増えることになりそうだ。
公開は2015(平成27)年4月4日土曜日から。
原作は、2007(平成19)年から2008(平成20)年まで『小学館ビッグコミック』に連載された、いがらしみきおの漫画『かむろば村へ』。
銀行員でありながら、度重なるノルマによる切迫感から"お金アレルギー"になり、お金を一切使わない生活を目指して東北地方の寒村・かむろば村にやってきた主人公・高見武晴が、不思議な現象や曲者揃いの一筋縄ではいかない村人たちとの関わりと生活ぶりを面白おかしく描いていて....。
高見の無鉄砲さと酒癖の悪さゆえの様々なトラブルとなれば、なおさら際立ってしまうだろうなあ。
「ジヌ」とは東北弁で銭あるいは金のことを指すとのこと。
時系列にたどれば、
「何も売らない、何も買わない、何もしないで生きてゆく」すなわち原始共産制の物々交換を理想に描く武晴の、「金がなければ百姓もできない」と諭す村長・与三郎(阿部サダヲ)と、自身を神様として何もしないが考えは述べる"なかぬっさん"(西田敏行)との関わりを通して、成長物語の描かれる第1巻。
第1巻での登場人物が本格的に暴れ始めるほか、隣市でヤクザに囲われている妖しい女子高生・青葉(二階堂ふみ)による武晴へのまとわりつき、武晴のヤクザからの青葉救出劇の面白おかしさ、といった一連の武晴のヘタレぶりの傍ら、みよんつぁん(モロ師岡)の奥さん探しや冬の村中の雪下ろしを手伝う姿といった誰にも素直で正直な姿勢の描かれる、第2巻。
32年後にはなくなってしまうという試算を発端とした、かむろば村の翻弄を中心に、政争の具にすべく暗躍する隣市市議と与三郎と因縁の深いヤクザにより、与三郎や旅館の板前・勝男(オクイシュージ)と、みょんつぁんのそれぞれの過去がつまびらかになる、第3巻。
政治という欲望と表裏のある大変人間臭い描写がより多くなり、主人公のラストの表情を描くための物語の展開を実感して...。
そして、本作の主人公は、武晴ではなく、村長・与三郎ではないのかという実感の強まってしまった、第4巻。
全体を通しては、自分の都合の良いように事を成すとは限らないものの、村の空気感が何よりいい。
かむろば村ではどのような問題でも解決するかのような想いでいっぱいになり、ただただ傑作。
ほかの出演者に関しては、与三郎の妻・亜希子に松たか子、いそ子に片桐はいり、奈津に中村優子、助に村杉蝉之介、助の妻に伊勢志摩、青木に荒川良々、青砥に皆川猿時。
肝心の松尾スズキ演じるは、多治見。
さすが「大人計画」にふさわしい顔ぶれ。
松田龍平か...。
2007(平成19)年2月より放送のNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』 出演時の訓覇圭プロデューサーと演出の井上剛や、2009(平成19)年4月下旬からの宮藤官九郎演出舞台『メカロックオペラ R2C2』での伝手から出演することとなり、社会現象にもなった2013(平成25)年4月から放送のNHK朝ドラ『あまちゃん』が放送終了してから、丸1年になろうとしているのか...。
脚本を手掛けた宮藤官九郎によれば、「世の中をなめた風情」の役をやっている時が素晴らしいからこそ、今後は虐げられたり、大きな声で叫ばなくてはならなかったりする状況の彼が見てみたいとのこと。
しかも、「我々クリエイターの発想力がどこまで松田龍平を壊せるか、まさに試される存在」と語っているとか。
その一環による劇団「大人計画」からの出演以来なのかなあと想像すれば、なかなか面白い松田龍平が観れそうで、さらなる磨きがかかりそうで、楽しみだ。
2014-08-05 |
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