wood job! ~神去なあなあ日常~
やはり、三浦しをんは人間関係の描き方の上手な作家さんだ。
この関係は、良いとか良くないとかを、一概に決めつけず、ただその関係性そのものを楽しませて陶酔させてくれることが大きいんだろうなあ。
2009(平成21)年5月に発売で、2010年本屋大賞ノミネート作品『神去なあなあ日常』(徳間書店)か...。
加えて、続編として2012(平成24)年11月発売の『神去なあなあ夜話』も...。
この年2014(平成26)年5月10日土曜日に映画公開。
題して、『WOOD JOB!(ウッジョブ!) 神去なあなあ日常』。
しかも監督は、あの『ウォーターボーイズ』(2001年)、『スィングガールズ』(2004年)、『ハッピーフライト』(2008年)、『ロボジー』(2012年)でおなじみの、矢口史靖。
キャッチコピーは、「少年よ、大木を抱け。」
気負うことなく肩の力を抜いて楽しめる青春物語が、目に浮かんできそうだ。
原作の物語の舞台は、三重県の山奥にある美人の産地として定評の神去村。
主人公は平野勇気。
自身の高校卒業後の将来を、担任の先生と母親に決められるまま、神去村にて林業の研修生として働くことになることから始まって...。
ローカル線の終点の駅に出迎えに来てくれたのは、髪を金髪に染めたヨキというガタイのいい男。
早々よりチェーンソーの使い方など教えられたところで、「?の雇用」というシステムの応募者にされたことを知った勇気は衝撃。
先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来、村には秘密らしきもの、
それでも、「やっと神去村に若者が来た」と涙ぐんでいるおじいさんを前に帰るとは言えず、そのまま山の生活へ...。
神去村の人たちはおっとりしていて、口癖は「なあなあ」。
「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」など、あらゆる意味に使われているものの、語尾にも「な」がつくので、のんびりした心地に。
林業従事者多くかつ百年単位の作業をしているゆえ、あくせくしてもしようがないと思いがあるかのようで...。
ゆるやかな成長物語を目にしているかのような夢心地だったなあ。
旧き良き日本人の生活ここにあり、と実感させる良書の一つ。
ただ、哀しいかな現実問題として、高校を出たての少しやんちゃな男子が、本当に林業に従事して勤まるものなのだろうか、という思いだけは残った。
それはかつての日本人が普通に享受していた、神去村ようなの自然環境や人たちの温かさ、お祭りなどの行事。
対して、物があふれかえっていて、何でも手に入る現在の都会での日常生活。
どちらの生活環境が普通なのか、比べるべくもないにせよ、少なくとも現在便利すぎる都会での日常生活には、いくらか疑問。
物満ち足りて、心を失ってしまった現代の日本人に、一石を投じる書籍であることに変わらず、大変面白かった。
そして、この度の矢口史靖監督による映画化では...。
これまでの作風に近い描写かなあ。
原作といくらか違った軽いノリとでもいうか...。
それでも、押さえるべきところは押さえているかのよう。
染谷将太演じる平野勇気は、毎日をお気楽に過ごす軽薄な男子ゆえ、大学受験失敗、彼女にも失恋、散々な状態のまま高校卒業へ。
そんな中、ふと目にしたパンフレット表紙で微笑む美女・直紀(長澤まさみ)につられて、街から逃げ出すように1年間の林業研修プログラムに参加するらしく...。
神去村は携帯電話の電波も届かない"超"が付くほどの田舎で、伊藤英明演じるヨキは、同じ人間とは思えないほど、凶暴で野性的。
逃げ出したい気持ちの中、とどまることを決意したきっかけは、例の表紙の美女・直紀が村に住んでいることから、という設定のよう。
ほかの出演者は、優香、西田尚美、マキタスポーツ、有福正志、近藤芳正、光石研、柄本明。
心に残る作品が、また一つ増えそうだ。
公開日が待ち遠しいなあ。ᵊ
2014-01-22 |
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