海賊とよばれた男 出光 感想
作品としては、百田尚樹氏による一人の人間の一代記であるかのようだけど。
しっかりと目を通せば、敗戦直後の何もないところから立ち上がった日本人の勇気と誇りの物語、それを体現した歩みなんだろうなあ。
4月9日火曜日、東京・明治記念館で開催された、全国書店員からの投票による「本屋大賞2013」発表会で、作家・百田尚樹氏の小説『海賊とよばれた男』(講談社)が、大賞に輝いた。
まさに凄まじい道のりだ。
出光興産の創業者・出光佐三氏をモデルにした主人公は、石油会社「田岡商店」社長・田岡鐵造。
あの第二次世界大戦の敗戦後、多くの借金を残した以外は、すべてを失ってしまい、油を売る相手もいない。
手始めは、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぐことから。
決して社員を解雇することはなく、従業員を家族のように配慮して面倒をみる情の厚さと、信頼できる相手とみなせばすぐ契約という思い切りの良さで、着実に経営力を培ってゆく。
また、ほかの多くの会社と違って、タイムカードなし、出勤簿なし、解雇なし、定年なし、絶対的「人間尊重」という個人商店そのもので、家族同士の関わり合いであるかのよう。
それはまさに、日本人の日本人による日本人のための会社。
西欧の巨大石油会社からの役員や、銀行からの役員も受け付けず、自社叩き上げの社員で構成されたプロ集団。
勤勉で質素を貫く反面、投機と中間搾取を嫌い、人を信じて消費者のために尽くし、意志が強く信念を貫き、剛胆っで粘り強く、GHQに楯突く肝が据われるくらいの率直な物言い。
あらゆる姿勢が武器と言っても過言じゃない。
一番の見所は、将来の日本の国益を考え、世界の石油を牛耳る7大メジャー"セブン・シスターズ"を相手に、正面から戦いを挑んだことだろうなあ。
そして、イランへ日章丸を派遣しての紆余曲折の結果、莫大な石油を輸入することになるんだから、心打たれるなあ。
同じくして、徳山に石油精製工場を建設して、到底不可能と思われるスケジュールで完成させたのも大きいなあ。
すべてを読み終えて、一番強く感じたことは、どこの国の人間であれ、相手によって態度を変えて媚びへつらうだけの誇りのない人間は、軽蔑されることに変わりはない、ということかなあ。
どれだけ、時代が移り変わろうとも、決して忘れてはいけない。
これから生き抜いてゆくためにも。
2013-04-11 |
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